後部要素が2拍からなる5拍以上の複合名詞のアクセントは、金沢方言の場合、[1]「無核型」、[2]核が前部要素にくる「前部核型」、[3]核が後部要素にくる「一般型(=後部核型)」に3分され、一部を除き、後部要素で型の所属が決まる。[3]の一般型のアクセントが事実上「拍構造」で決まる点が金沢方言の特徴である。
文の一部が高く発音され、文末にかけて急激に下がるイントネーションをもつ「のだ」文(実際の発話では「んだ」と発音される)が新しい用法として注目を集めている。この論文では、このイントネーションを卓立音調と急激に下がる文末音調の組み合わせと分析し、この用法の新しさは、この音調の組み合わせが今まで付与されることがなかった「のだ」文に付与されるようになったことだと主張する。さらに、この用法の使用者と非使用者の間には、話し手と聞き手のどちらが述べられた情報についてより多くの知識を持っているかに関して認識のずれがあることを指摘する。
本稿では、移動を表す動詞「行く・来る」の使用法を、その意味と使用条件を区別しながら記述し、その上で、次の2点を主張する。
日本語分類辞「−ホン(本)」は、しばしば鉛筆や紐、棒などといった形状が細長い物を数える際に用いる分類辞としての性質に注目されがちであるが、「−ホン」の用法は実際の形状を持たない事物(情報・作品・項目等)にまで幅広い。本研究では、最近のメディアや広告、および一般発話で得られた例文を参考に、「−ホン」を例として「1分類辞 = 1意味核」で必ずしも全ての分類辞が成立しているのではないこと、分類辞によっては多義的であり、その複数の意味特徴が「意味連鎖」ともいうべきものをなしうることを主張する。
バリ語には、いわゆるapplicative verbを形成する接辞 -in と -ang がある。本稿では、この接辞が付いた動詞の形態、意味、統語的特徴を記述する。
エストニア語の共格名詞句は、名詞修飾句として、主名詞の前に現れる場合と後ろに現れる場合がある。先行研究では、それ以上踏み込んだ研究はなされていない。本稿では、主名詞に対する共格名詞句の位置の決定に、(i) 主名詞の示す対象と共格名詞句の示す対象の間の「意味的密接さ」の違い、および、(ii) 文全体の述語動詞が持つ結合価、の2つが関わっていることを示す。
現代アイスランド語の所有関係を表す動詞のうち、eiga 'own', hafa 'have', vera medh 'be with' の3つを扱った。「所有者」と「所有物」の間の意味的関係のあり方ないし捉えられ方の違いが、述語動詞の選択と相関することに注目して「所有物」を分類し、その分類に従って各々の動詞の用法を記述した。
バスク語アスペイティア方言における「非人称」表現のうち、助動詞 du / ditu による形式を扱う。この形式は、気象・日照にかかわる自然現象、および、何かが「記されている」状態を表す表現にのみ用いられ、その中に現れる動詞は25に限られる。他の「非人称」表現と違い、動詞述語の表す内容を実現する「行為者」が想定できないか、あるいは、想定できても考慮の外に置かれているもので、動詞述語の表す現象・状態のみがクローズアップして述べられる。
クワニャマ語は、ナミビア北部に話されるバントゥ系の言語で、オヴァンボ諸語の一つである。この論文は、この言語の動詞の不定形、直説法形、およびその他の形のアクセントを記述したものである。
「知る」を意味する動詞として、ポルトガル語にはsaberとconhecerとがある。Saberは「ある事柄を知っている」ことを表わすのに対し、conhecerは「あるものそのもの自体を知る」ことを表わし、かつ「直接的体験を通して知る」ことを表わす。また、saberは「知らない」状態(ただし否定形の副詞とともに)と「既に知ってしまった」状態しか表わし得ないのに対し、conhecerは「知る」過程をも表わしうる。本稿は、saberとcohecerのこのような意味の違いを明らかにし、それが統語上でいかに反映しているかを検討したものである。