by hkum

言語学論集12号 論文要旨


湯川 恭敏「ントンバ語動詞アクセント試論」

ントンバ語は、ザイールの赤道州に話されるバントゥ系の一言語で、モンゴ語の方言とされている。この論文は、ントンバ語の動詞のさまざまな活用形のアクセントを記述するものである。ントンバ語の動詞は、アクセントの面から2つの型に分類できるが、それぞれの型の動詞が、不定形、直説法各形、連体修飾各形、等において、どのようなアクセントを呈するかを解明する。


上野 善道「青森市方言の複合名詞のアクセント(補遺)」

別途公刊される「青森市方言8モーラ体言のアクセント資料」(『アジア・アフリカ文法研究』Vol. 20)に併せて掲載するつもりでいながら、予約枚数の関係でそれができなくなった部分をその「補遺」という形で掲げる。上記論文の8モーラ語のリストの内、その前部要素と後部要素(「愛妻弁当」の例で言えば、「愛妻」と「弁当」)とそのアクセントを抜き出し、ダブリを除いてモーラ数別の表音式五十音順に配列したものである。


熊本 裕「コータン語韻文書簡について」

コータン語文献に特有のジャンルとして、手紙形式の詩がある。これは実際の公式文書(外交的書簡)の下書きとしばしば混同されるが、むしろ文学作品の一種とみなすべきである。完全な形で残存しているものは一つもないが、敦煌出土の写本(スタインおよびペリオ蒐集)の中に、幾つかの断片が保存されており、ここではそのうち、現在まで写真版が出版されたのみでまとまった解釈の行われていない P 2027 を扱う。


杉浦 滋子「『だ』の意味 〜『うなぎ文』をめぐって〜」

「ぼくはうなぎだ」というタイプのいわゆる「うなぎ文」については、奥津(1978)以来様々な分析が提唱されている。しかし、Austin (1962) の用語でいうところの performative な文を考察すると、「だ」及び「です」には「断定」の意味があること、そしてそのことから「うなぎ文」の分析として述語代用説や分裂文説よりも、述語消去説が適当であることを指摘する。


加藤 昌彦「カレン語の3つの助辞 di?, li, lv について」

本稿はカレン語の述部に現れる助辞 di?, li, lv の体系的な記述を目的としている。これらが同一節中において共起することは決してない。このうちdi?は事象の累加を表す。一方、lilvは言及時点(多くは発話時点と一致する)における事象の生起を表すとともに、事象の生起前と生起後の状態の対照性を表す。lilvは同一形態素の異形態とみなされる。di?li-lvの意味特徴は、Morrissey (1973) が英語の現在完了と 'still / anymore' の分析のために提示し、後に Okell (1979) がビルマ語の助動詞の分析に用いた方法を援用して表せばさらに明確になる。


月田 尚美「アミ語の動詞接頭辞 mi- と ma- について」

アミ語で別々に扱われてきた「普通」のma-形と「受身」のma-形は、形式的に共通し、意味的に連続している。この二種類のma-形を統一的に説明することが出来ないか、mi-形と対比しながら検討し、degree of affectedness, affected entity等の概念を用いてまとめた。

mi-形:「主格の名詞句」が自分より他のものに影響を及ぼす力を持っていること、又は、それを行使しようとしていること、したことを表す。

ma-形:影響が「主格の名詞句」より他に及ぶことがない、若しくは他より主に「主格の名詞句」自身に影響が及ぶこと、及んでしまったことを表す。及んでしまった後の状態に注目する場合もある。


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